日記編の各記事のなかでも述べていますが、JMTを歩くにあたってのルールや気を付けるべき事項を再度一覧にまとめてみたいと思います。
パーミット
JMTを含むウェルダネスエリアで、日をまたぐキャンプをする場合はパーミット(許可証)が必要です。
スルーハイクの許可書は事前抽選制です。
セクションハイクでは出発地によりますが、基本的には予約の先着順です。
自分が出発を希望するトレイルヘッド(登山口)があるウィルダネスエリアにあるオフィスに申し込みます。
パーミット取得方法については、こちらの記事をご覧ください。
食料保管
シエラネバダにおいては、ほぼすべてのエリア・標高帯がブラックベアーの生息地です。
そのため、JMTをバックパッキングする際にはベアキャニスターの携行が義務付けられています。
ベアキャニスターとは強化プラスチックなどでできた筒状のケースで、熊が開けることができないように蓋の部分がひと工夫されているものです。
各ウィルダネスエリアで公式に認められているものを使う必要があります。
夜寝るときには食料はもちろん、食べた後のゴミ、日焼け止めや歯磨き粉などのにおいのするものはすべてベアキャニスターに入れて、テントから離れたところにおいておきます。
同様に、匂いがつくことを防止するため、テントから離れた場所で料理し食べる必要があります。
なお、過去にキャニスターの携行が義務付けられていないときに行われていた熊から食べ物を守るための方法、例えば、木に食べ物などを吊るすことや、テントの中で食べ物一緒に寝ることなどは、現在ではほとんどの場所で禁止されています。
また、熊を見かけた際は最寄りのレンジャーやナショナルパークオフィスなどに場所や状況を伝えることが望まれます。
キャンプ地
JMTでバックパッキングする際の楽しみのひとつとして、キャンプ場所をどこでも自分たちの好きなところに決められることがあります。
ただし、完全に自由なわけではなく一定のルールはあります。
まず、大前提として地面が砂や砂利、岩などの丈夫な場所にのみテントを張ることができます。
例えば、草地やぬかるみ地などはキャンプ場所として適切ではありません。
また、トレイルや水辺(川や湖)から一定の距離を取ってキャンプをする必要があります。
ウィルダネスエリアによって細かくは異なりますが、大体それぞれから100フィート(30m)程度離れる必要があります。
そして、周辺一帯が完全にキャンプ禁止のエリアもあるため、事前に地図や現地の看板などで確認しておく必要があります。
水
JMTは基本的に沢沿いのトレイルで、3000mを超えるような標高の高い場所にも高山湖がたくさんあるため、水の確保に困ることはありません。
しかし、ジアルジアなどの病原体が存在する可能性があることから、飲み水は浄水または煮沸する必要があります。
飲み水すべてを煮沸によって確保することは現実的ではないため、浄水器や浄水剤は必ず携行しましょう。
トイレ
トイレの際は15cm程度の穴を掘って、排せつ物を埋めます。
場所はトレイル、キャンプサイト、水辺のそれぞれから100フィート離す必要があります。
なお、トイレットペーパーは持ち帰る必要があり、一緒に埋めることは禁止されています。
埋めると動物が掘り返してしまい、周辺環境が悪化するからです。
そのため、スコップは必需品です。
加えて、使用後のトイレットペーパーを入れる専用のジップロックなどを用意しておくと便利です。
ただし、例外として、ホイットニーエリアでは全域で携帯トイレの使用が義務付けられています。
私たちはヨセミテでパーミットを受け取るときに、あわせて携帯トイレももらいましたが、
ホイットニーエリアに入る直前のCrabtree Meadowのあたりにも用意されていました。
洗濯
洗濯(衣類はもちろん、食器なども含む)は水源から100フィート離れて行う必要があります。
そのために水を運ぶことのできるバケツなどが必要です。
もちろん、いくらアウトドア用の生分解性の石鹸といえども、直接水源に流すことは厳禁です。
焚火
キャンプ時に焚火を眺めながらゆっくりすることは、JMT特有の楽しみのひとつです。
ただし、山火事防止などの観点から厳格なルールが定められています。
許可エリア
焚火ができるエリアは限定されています。
地図の記述や現地の看板などで焚火の可否を確認しておきましょう。
(例えばホイットニーエリアでは標高にかかわらず全域で焚火は禁止です。)
一般的な目安として、標高が9000~10000ft以上の場所では焚火が禁止されています。
ファイヤーサークル
焚火が許可されているエリアであっても、新たにファイアーサークルを作ることは禁止されています。
既存のファイアーサークルをそのままの状態で使う必要があり、石を追加してサークルを広げたりする行為なども禁止です。
燃やしてよいもの
地面に落ちているもののみです。
生きている木はもちろん、死んでいそうだからといって立っている木から枝を折ったりしてはいけません。ゴミを燃やすことも禁止です。
常に細心の注意を
焚火の最中は、火から目を離すことなく注意を払いましょう。
火を消す際にはその場から離れる30分以上前に水をかけて灰を良くかき混ぜます。
砂をかけて消してはいけません。
雪や渡渉
雪
JMTは高山帯のバックカントリーであり、6月や7月はトレイルが雪で隠れていることも少なくありません。
その年の降雪量にもよりますが、特にグレンパス(3635m)やマーザーパス(3688m)の北斜面や、フォレスターパス(4011m)の南側などに大きな雪渓が残ることが多いようです。
かなりの早い時期を除いて、軽アイゼン以上が必要なほど斜面が硬いことはなく、踏み跡もしっかりしているのが普通です。
しかし、トレイルは雪の下で目視することができないため、進むべき方向を地図とコンパスできちんと確認することや、トレッキングポールでバランスを取って滑落しないように歩くことなどが大切です。
渡渉
6月や7月初旬は雪解けに伴い水量が増え、流れも速くなるため、渡渉の危険性が上がる時期です。
昔とは違い、現在のJMTでは本当に命が危ないような渡渉箇所にはしっかりとした橋が架けられていますので、そこまで渡渉に対して神経質になる必要は無いと思います。
しかしながら、水量が多かったり流れが速かったりする場合は怖かったり苦労したりすることも事実です。
渡渉で困ったときのコツを何点か挙げてみます。
- 一般的な渡渉点の上流、下流にもっと良い場所がないか探してみる。
(かなりの確率で倒木や置石などを利用して渡れる、別のルートが見つかります。) - 荷物が重い場合は一旦置いて、空身で深さや流れの速さなどを試してみる。
- サンダルなどに履き替える場合は、テバなどストラップがついてしっかりと足を固定できるものを選ぶ。
- トレッキングポールでしっかりと川底を刺して身体を支え、一歩一歩ゆっくりと渡る。
- 水量は午後に一番増えて朝に一番減るのが通常なので、どうしても渡れなさそうな場合は無理せず周辺でキャンプして待ち、翌日の朝イチに渡る。
装備について
ベアキャニスターや浄水器など、JMTに特有の装備については、こちらの記事で詳細に解説しています。
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