ニュージーランドのグレイトウォークのひとつ、ミルフォードトラックを2019年2月に歩いた経験をもとに、予約や料金、装備など役立つ情報をまとめました。
なお、トラックでの日々の様子や、詳細な行程などは日記編をごらんください。
概要
“Finest Walk In The World” 、日本語では「世界一美しい散歩道」と呼ばれるニュージーランドで最も有名なトラックのひとつです。
ニュージーランド南島に位置し国内最大の国立公園である、Fiordland National Park(フィヨルドランド国立公園)内にあります。
Lake Te Anau(テアナウ湖)を出発して、世界的に有名な観光地ミルフォードサウンドまでを結ぶ53.5kmのトレイルで、緩やかに沢沿いを登って峠を越え、ゆっくりと沢沿い下っていくという行程です。
マッキノン峠越えのセクション(3日目)を除き、急な上り下りはありませんので、歩きとおすことはそれほど難しくありません。
沢沿いのトレイルと言っても、氷河によりほぼ垂直に削り取られた深い谷が大きく開けている中を歩くので、解放感のある荘厳な景色を見ることができます。
また、この地域は雨が多いこともあり、シダ類やコケ類が豊富で森の中の緑も生き生きとして大変目に優しく、美しいです。
もちろん、峠から見る山岳展望も、山好きにとっても文句なしに素晴らしいものです。
インディペンデント(個人)ウォークとガイドウォーク
ミルフォードトラックを歩く方法には大きくわけて2つあります。
インディペンデントウォークとガイドウォークです。
両者は、単にガイドを付けずに個人で歩くか、ガイドと一緒に歩くかという点だけではなく、必要な装備、歩く行程、泊まる場所などすべてが大きく異なっています。
インディペンデントウォークでは、ガスコンロや水道、マットレスなど最低限の設備のみが整ったハット(山小屋)に泊まるため、食糧、調理器具、寝袋などは自分で持参する必要があります。
他方、ガイドウォークでは、ほぼホテルと言ってもいいほどの豪華なロッジに泊まります。
ガイドウォークのロッジはインディペンデントウォークのハットとは全く違う場所に建てられているため、インディペンデントウォーカーとガイドウォーカーとでは、1日に歩く距離や時間も異なります。
各ロッジには、電気やシャンプーリンス付きの温水シャワー、普通のベッドに普通の寝具が備え付けられていることはもちろん、行程中の3食もすべて提供されるため、背負う荷物も日帰り登山程度のもので十分です。
夕食時には広々としたダイニングでNZワインを注文することもできるそうです。
ちなみに、インディペンデントウォーカーのガイドウォークロッジへの立ち入りは、厳禁されています。見学がてら中に入ろうとしたら注意されました(笑)
歩くために必要な費用も大きく異なります。
後ほど詳述しますが、インディペンデントウォークの場合はトレイル前後の交通費を含めて$650程度です。これに対し、ガイドウォークの場合は部屋のグレードにもよりますが、$2500程度必要です。食費込みとはいえ、価格差は相当なものです。
以下では私たちが歩いた、インディペンデントウォークについての情報を説明します。
ハイシーズン(夏期間)の制限
ミルフォードトラックは世界中からトレッカーが集まる人気の高いトレイルであるため、ハイシーズン(10月後半から4月後半)には1日にトレイルを歩くことのできる人数をはじめ様々な事項が制限されています。
1日に40 人のみ
1日に登山口を出発できるインディペンデントウォーカーの数は40 人のみと制限されています。
なお、現地に行ってからの予約はほぼ不可能ですので、事前に、それもかなり前から予約をしておくことが必要になります。
詳細な予約方法は「予約」の項目をご覧ください。
南から北の一方通行
ミルフォードトラックは周回のトレイルではなく、片道のトレイルです。
そして、ハイシーズンは南から北に向けてしか歩くことができません。
行程は3泊4日で固定される
出発日を指定すれば自動的に、3つのハットが1泊ずつ順番に予約されます。
例えば体調がすぐれない・天気が悪いなどの理由で1つのハットに停滞することや、逆にもっと歩きたいから次のハットに進むことなどは一切許されません。
なぜなら、各ハットのベット数は決まっており、後ろからは翌日の予約枠いっぱいの数のトレッカーたちが同じ行程で進んでくるからです。
予約
予約は必須
世界中の他の有名トレイルと同様、ミルフォードトラックの一番の核心部は「予約」を取得することです。
ジョンミューアトレイルのスルーハイクなどと同様、予約がとれた時点でかなり達成感があること間違いなしです(笑)
なお、現地に来てからのキャンセル待ちなどはほぼ不可能であり、その前提での計画は現実的ではありません。
同じフィヨルドランド国立公園内のグレイトウォークである、ケプラートラックやルートバーントラックを歩いた際には「現地に来てから予約が取れた」という人たちにも会いましたが、ミルフォードではそのような人はおらず、皆かなり前から予約してきた人たちばかりでした。
予約方法
予約はニュージーランド政府の省庁のひとつであるDOC(Department of Conservation)のサイトからオンラインで行えます。
毎年6月後半くらいに次の10月~4月の期間の予約が開始されます。
5月後半から6月前半くらいにはWeb上で正確な日付が公表されますので、こまめに確認しておきましょう。
予約開始10分ほどで、ほとんどの日程が満員になってしまいます。
大げさでなく、予約開始時間(日本時間では早朝6時くらい)にはネットの前でスタンバイしておき、時報と同時に予約ボタンを押すことがポイントになります。
予約にあたっては、DOCのアカウントが必要ですので、予約開始時間までにあらかじめ作成しておくことはもちろん、ログインも済ましておきましょう。
私たちはこの方法で希望出発日(2月22日なので、約8か月後!)の予約を取ることができましたが、同時にアメリカから予約をしていた友達は同じ日の予約が取れず、別の日の出発になってしまいました。
オフシーズン
なお、ハイシーズン以外の期間は、ハットの予約は不要で先着順での利用となります。利用料金も1人1泊$15となっており、ハイシーズンと比べると破格の値段です。
ただし、この時期はハットに管理人がいないことはもちろん、ハット内の水道・ガスコンロも使えません。
また、冬期ですので、川にかかっている橋の多くは外されますし、雪崩などの気象リスクも高まります。
料金
以下は2018/19シーズンの料金です。(単位はNZドル)
ミルフォードトラックを歩くにあたり、食料や燃料以外に最低限必要な費用を挙げてみました。どの街からの出発と考えるかで多少は前後しますが、約$650程度でしょうか。
なお、交通の詳細は「トレイルまで/からの交通」の項をご覧ください。
- 街からTe Anau Downsまでのバス代 $28~$68(出発場所により異なる)
- Te Anau DownsからGlade Wharf(登山口)までの船料金 $90
- ハット使用料 1人1泊$140×3日で $420
- Sandfly Point (下山口)からMilford Soundまでの船料金 $52
- Milford Soundから街までのバス代 $39~$92(到着場所により異なる)
トレイルまで/からの交通
トレイルまで
ミルフォードトラックの登山口、Glade Wharfには専用の船でしかアクセスできません。
この船はテアナウの街から車で30分ほどの、Te Anau Downsというところから出発し、登山口まではテアナウ湖横断の約1.5時間の船旅です。
天気が良ければ、単なる登山口までの移動ではなく、この船旅自体がとても楽しいです。
船から見る景色は、ミルフォードサウンドのクルーズ船から見た景色にも負けない、素晴らしいものでした。
なお、Te Anau Downsまではテアナウやクイーンズタウンなどの主要な街からシャトルバスが運行しています。
トレイルから
ミルフォードトラックの終点はSandfly Pointという場所で、ちょうどミルフォードサウンドの対岸にあたります。ここからは小型のボートに乗ってミルフォードサウンドまで戻ります。
行きのゆったりとした船旅とは異なり、10人も乗れば満員の小型ボートで10分弱の移動です。
ミルフォードサウンドからテアナウやクイーンズタウンなどの主要な街まではシャトルバスが運行しています。
予約はDOCのサイトから
登山口までのシャトルおよび船、下山口からの船およびシャトル、の計4つの予約が必要ですが、それぞれの運営会社に連絡して個別に手配する必要はなく、すべてセットにしてDOCのサイトから予約することできます。
ミルフォードトラック自体の予約を取る際に交通も合わせて予約してしまっても良いですし、後ほどベースとする街の宿などが決まったタイミングで別途交通のみを予約することも可能です。
出発前にはDOCで受付
なお、ミルフォードトラックを含め、ニュージーランドのトラックでは出発前に必ずDOCで予約の確認や受付を済ませる必要があります。トレイルによっては、この時にハットチケット(パーミット)が発行される場合もあります。
そのことも考慮してベースとする街を決めましょう。
なお、もちろんテアナウやクイーンズタウンにはDOCがあるため、通常は問題にならないと思いますが、自家用車でトレイルにアクセスする場合などは注意が必要です。
ルードバーントラック、ケプラートラックと合わせて歩く
ミルフォードトラックとルートバーントラックは場所的に近く、両者ともにシャトルバスによって街(クイーンズタウンやテアナウ)から/までのアクセスが確保されているので、続けて歩く人も多くいました。
休憩日なしに両方を連続で歩くことはもちろん、片方を歩いた後、一旦街に帰ってゆっくりしてからもう一方を歩くこともできます。
また、ケプラートラックはテアナウの街から徒歩で登山口/下山口までアクセスできる(シャトルバスによるショートカットも可能)ため、他の二つのトラックと組み合わせて歩きやすいです。
私たちは、まずケプラートラックを歩いた後テアナウの街に宿泊、次の日ミルフォードに出発し、ミルフォードをハイクアウトした日にはミルフォードサウンドで一泊、次の日にDivide(デバイド、ルートバーンの登山口)までシャトルバスで移動してルートバーンを歩く、という行程で3つのグレイトウォークを続けて歩きました。
旅の行程、特に交通手段のアレンジが必要なミルフォードとルートバーンを歩く順番についての考慮事項をいくつか挙げてみます。
ミルフォード→ルートバーンの順に歩く
この方法は、クイーンズタウンを起点に最終的にクイーンズタウンに帰ることを考えると、時計回りに一周するかたちになるため無駄な移動がなく、効率的な方法です。
ただし、ミルフォードサウンドでは少しのスナックなどを除いて食料の補充はできないため、出発時からミルフォード4日分+ルートバーン3日分の計7日間分の食料を持つ必要があるというデメリットがあります。
ルートバーン→ミルフォードの順に歩く
こちらの方法は、ルートバーントラックをハイクアウトした後、テアナウに宿泊するため食料の調達が可能であり、余分な荷物(食料)を持って歩く必要がありません。
また、個人的意見ですが、ルートバーントラックはルートバーンシェルターからデバイドの方向に歩くほうがトレイルや景色の変化がドラマティックで、より楽しめると思います。
ただし、移動の面でデメリットがあります。
ルートバーンのハイクアウト後とミルフォードのハイクアウト後の2度、同じ道(デバイドとテアナウの間)を通ることになり、その分時間も費用も多くかかります。
装備・持ち物
ミルフォードトラックの装備概略
日本での登山でいうと、自炊小屋泊の荷物-ガス及びストーブ+シュラフがおおよそのイメージです。
加えて、後述する濡れ(雨)対策を充実させることが一番重要です。
ミルフォードトラックのインディペンデントウォークでは、ハット(山小屋)に泊まるため、テントは不要です。なお、そもそもテント泊は禁止されています。
ハットは日本の山小屋とは異なり、食事の提供はないため、自分で3食用意する必要があります。
ただし、水道はもちろん、ガスコンロも備え付けられたキッチンがあるため、ガス缶やストーブは不要です。鍋や皿などの食器類は持っていく必要があります。
そして、マットレス付きのバンク(二段ベッド)で寝るため、スリーピングマットは不要ですが、寝具(シュラフ)は自分で用意する必要があります。
濡れ対策
ミルフォードの装備で一番重要なことといえば、持ち物の濡れ対策です。
場所柄、雨の日が多いことはもちろん、大量降雨の際にはトレイルが膝上くらいの深さまで、まるで川のようになってしまうことがあるのがミルフォードトラックです。
トレイルの中でも特に増水しやすい箇所には、下の写真のようなポールが道の両端に設置されており、雨で道が完全に水没してしまった場合はこれらを頼りに進みます。
そのため、ザックカバーだけでは完全に不十分で、ザックの内側全体をすっぽり覆う防水の大きなパックライナー(大きなゴミ袋などでも良い)を使用するか、もしくは個々のスタッフバッグを完全防水のものにするかの対策が必要です。
ザックの内側全体を覆うパックライナーは、現地のアウトドアショップはもちろん、DOCのオフィスでも売っています。
ちなみに私たちは、パックライナーを使うと道中での細かい物の出し入れがしにくいのが嫌なので、絶対濡れてはいけないもの(シュラフ、着替えなど)をそれぞれ個別に防水スタッフバッグに入れていました。
また、頑丈で中くらいの大きさのごみ袋をいつもより余計に持って行き、防水スタッフバックと併用しました。
実際に持って行ったもの
- バックパック
ばぁ:オスプレーエーリエルAG 65L
じぃ:グレゴリーバルトロ 75L
私たちはミルフォードに続いてルートバーン(テント泊)も歩いたので、合計7日分の食料やテントのための大きなバックパックが必要でしたが、ミルフォードだけなら40L~50Lで十分だと思います。
- 履きなれた靴
- 予備の靴紐
- シュラフ(モンベル3番)
日本の混雑した山小屋に比べると超快適な広さですが、それでも満員のバンクルームは暑いくらいで、2月末でも寒く感じたことは一度もありませんでした。
防水スタッフバックに入れ、さらにゴミ袋で包んでいました。
- シュラフのインナーシーツ(モンベルウォームアップシーツ)
寒い時にシュラフのインナーとして利用するのはもちろん、暑い時にはシーツ単体で寝ることもできるため、持っていると快適です。
- サンダルなどの上履き
NZのハットは基本的に土足(トレイルを歩くとき履いている靴)禁止です。
そのため、サンダルやスリッパなどを持って行かないと、ハット内でずっと素足で過ごさないといけません。軽量スニーカーやトレランシューズなどを持ってきている人もいました。
- ジェットボイル
クッカー兼食器として持っていきました。
ただし、ハットに備え付けられているガスコンロの五徳が比較的大きかったので、なべ底の小さいジェットボイルは使いにくく、普通の鍋のほうが使い勝手が良いと思いました。
- 食料
夕食のメインは、フリーズドライを中心に献立を組み立てました。
NZでは普通のスーパーにもトレッキング用のフリーズドライフードが売っています。
Back Country Cuisine というメーカーのものが有名です。1袋2人分の分量で、$12~15程度です。
また、NZのスーパーはナッツ類やシリアル類、チョコレートやビスケットなどのお菓子の品揃えが豊富で、トレッキングフードには事欠きません。もちろんインスタントラーメンもたくさんの種類が売っています。
朝食にはアルファ米の五目御飯を日本から持っていきました。
- 衣類・防寒着
夏でも天気次第で、汗ばむ陽気から震える寒さまで気温が変化しますので、対応できる衣類が必要です。
着替えは、Tシャツ2枚、長袖シャツ(日よけパーカー)1枚、長ズボン1枚、短パン1枚、靴下3足、下着2着程度をもっていきました。
防寒着として、ダウン上下、およびフリースなど化繊の上着も持って行きました。
ダウンは休憩時や就寝時に利用するつもりでしたが、私たちが訪れた2月末ではそこまで寒くなかったので、結果的にあまり着ませんでした。
化繊の上着は、パタゴニアのナノエアなどの行動できる中間着がおすすめです。
- パジャマ用のアンダーウェア、靴下
上記の着替え以外に、パジャマ用のアンダーウェア上下1着および靴下を持っていくと快適です。なにがあっても絶対濡らさないように細心の対策をしておきましょう。
アンダーウェアは、モンベルのジオラインライトウェイトを持っていきました。
パジャマ用途とはいえ、登山用の吸水速乾のものを選ぶことで、いざというときは歩く時にも使えます。
- レインウェア上下
雨の日が著しく多いフィヨルドランドでは必須の装備です。
少しでも快適に過ごすために、新品でない場合は、事前に洗濯・撥水などの手入れを入念にしていきましょう。
- タオル
速乾のものがよいです。
水に濡らして拭くだけで身体のべとつきも取れるファイントラックのナノタオルがかなりおすすめ。値段は高いけど価値はあります。
- 帽子
- サングラス
- 手袋
薄手のインナーおよび雨具の手袋
- ハイドレーションやナルゲンなどの水筒
歩きながら飲めるハイドレーションがとにかく便利です。
私たちはこれに加えて、ナルゲンにスポーツドリンクを作って持ち歩いていました。
- トイレットペーパー
トイレには備え付けられていますが、念のため。
- ゴミ袋、コンビニやスーパーの袋、ジップロック数枚
ゴミ袋は装備の濡れ防止に必須なので、多めに持って行きました。
その他、行動食を入れたり、洗濯物を入れたり、ごみを入れたり。
- ヘッドライト
ハットでは、夕方の少しの間ダイニングルームに電気が点くだけで、あとは真っ暗です。
- 時計
- カメラ
- カメラ替えバッテリー、モバイルバッテリー
- マルチツール
- 化粧品、日焼け止め、ボディクリーム、歯磨きなど生活用品
- ファーストエイド(薬)セット
風邪薬、浄水剤、絆創膏、靴擦れパット、テーピング、目薬、爪切りなど。
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