Rim to Rimとは
グランドキャニオン国立公園は真ん中を流れるコロラド川を挟んで、北のノースリムと南のサウスリムの二つに分かれています。
Rim to Rim(訳すと「崖の淵から淵へ」?)はこの両者を横断することを言います。
歩くのはもちろん、トレランでもいいですし、馬に乗って旅をするのもOKです!
スタートはノース・サウスどちらのリムからでも可能です。
まずはリムから谷底まで険しい崖を降り、平らな谷底を歩いてコロラド川を渡ったら、また崖を登って反対側のリムまで戻るという行程です。
ちなみに車だと、キャニオンを大きく迂回しないといけないので、道のりは210 マイル(340km)もあり4時間以上かかります。
グランドキャニオンというと超有名観光地で、本やテレビなどでも散々取り上げられているので、ビレッジの展望台から景色を眺めているだけではあまり新鮮味がないかもしれません。
しかし、実際に自分の足で谷底におりて何日間かを谷底で過ごし、また崖を登って反対側のリムの上まで帰ってくると、グランドキャニオン全部を全身で体験したという実感が湧きます。
とても満足のいく、本当に素晴らしい経験でした。
トレイルもしっかりと整備されていて歩きやすく、余裕を持った行程を組んで十分な準備をすれば、比較的簡単に歩ききることができると思います。
また、Rim to Rim でなくても、日帰りトレッキングで崖の途中まで降りるだけでもその雄大さを十分感じることができるので、ぜひトライしてみてください。
ベストシーズン
夏(5月半ばから9月)の間がトレッキングシーズンです。
ただし、この中でも6月~8月の真夏は暑すぎるうえに、モンスーンが来る確率も高いようです。
トレイル自体は一年中オープンしていますが、10月に入り秋も深くなってくると日が短くなってきます。
また、谷底では小川があるので大丈夫ですが、崖の上り下りの間は水が確保できなくなることが多いです。
そして、冬の間はノースリムのビレッジは閉まっています。
さらにトレイル上部には雪が積もり、場合によっては凍っていてアイゼンなどが必要であり、なかなか気軽にトレッキングを楽しむという雰囲気ではありません。
私たちが訪れた9月中旬は、ノースリムのビレッジではフリースが必要なほどの気温でしたが、谷底では日中40度を超えていました。
ただし、朝早い時間で谷底に日が差す前はそれほど暑くもなく、快適でした。
ちなみに、道中レンジャーに会うたびに、10時から4時の間は歩くなと言われていました。
とにかく暑いので、遅くても昼までにはテント場についてゆっくりしておくのがよいと思います。
やむを得ずその時間帯に歩く場合はマメに水浴びをして、服や帽子を濡らして歩きましょう。
なお、谷底のトレイルは基本的にBright Angel Creek という小川沿いについているので、水浴びをすることも、飲み水を確保(要浄水)することも比較的容易でした。
ただしコロラド川は別です。
流れも速く、川幅も広く、深いため、決して近づいてはいけません。
ルート選択(北から南か、南から北か)
Rim to Rimはノース、サウスどちらのリムから歩き出すこともできます。
そして、ノースリムと谷底をつなぐトレイルは North Kibab Trail ひとつしかありませんが、サウスリムと谷底をつなぐトレイルは Bright Angel Trail とSouth Kaibab Trail のふたつがあります。
また、サウスリムへの登り返しは、Bright Angel Trail を選ぶと良いでしょう。
<南向きルートがいい理由>
・ノースリムとサウスリムの登山口の標高はそれぞれ約2500m、2100mであり、標高の高いノースリムから下り始めて、標高の低いサウスリムに登り返すほうが楽。
・ノースリムをゴールにすると、登山口がビレッジから4kmくらい離れているので、崖を登り返したあと、さらにビレッジまでの歩きが1時間程度かかる。
・逆にサウスリムがゴールだと登山口がビレッジ内にあり、シャトルも頻繁に通っているため、なにかと便利。登山口から最寄りのカフェテリアへもすぐ。
・Bright Angel Trail には途中、水場、レンジャーステーション、テント場などがあるが、Nouth Kaibab Trail にはそれらがないため登るとなるときつい。
ロッジ泊かテント泊か
トレランスタイルでRim to Rim を10時間くらいで走り切る人たちも多くいるようですが、最低1泊2日以上かけて歩くのがモデルコースとされています。
個人的にはグランドキャニオンを目いっぱい体験するためには、リムより下で2泊以上したほうが良いと思います。
ゆっくり歩いてゆったり過ごしてこそ、「グランドキャニオンの中にいる」ことを実感できると思います。
リムより下にロッジは1つだけしかありません。
サウスリムから谷底まで下り、コロラド川を渡ったところにあるファントムランチというロッジです。
大変な人気で、13か月前から申し込みが開始されますが、世界中から予約が殺到し即日埋まってしまうようです。
ファントムランチはとても雰囲気の良いロッジでごはんもおいしいようですので、一度は泊まってみたいロッジです。
しかし、予約の確保が困難なうえにロッジ泊のみで計画すると1泊2日でRim to Rimを歩かないといけないので少し駆け足になります。
そのため、テント泊がおすすめです。
テント場は道中3か所あり(上記地図参照)、指定地以外のテント泊は禁止されています。
なお、テント利用の場合はPermit(許可書)が必要です。
ファントムランチに泊まる場合はファントムランチの予約があればパーミットは不要です。
パーミット
グランドキャニオン国立公園で、リムより下でキャンプをする場合はバックカントリーパーミットが必要です。
なお、日帰りトレッキングの場合は不要です。
申込方法
パーミットの申し込みはオンラインシステムやEmailなどではすることはできず、必要事項を記入した申込書をFAXするか、郵便で送るか、もしくは現地に直接持っていくかしかありません。
この中では、FAXが一番現実的かつ安心でしょう。
コンビニに行けば簡単に国際ファックスを送れます。
私たちはファミリーマートから送りましたが、ガイダンスに従って複合機を操作するだけで良く、非常に簡単でした。
申込書は、NPS(ナショナルパークサービス)のウェブサイトの真ん中より上あたり、「How to Apply」のところにPDFファイルが用意されています。
記入事項
申込書には、氏名住所などのほか、希望する旅程を第2希望まで記入します。
また、希望の旅程での抽選に外れた場合、どこまで変更を許容できるかもあわせて記入します。例えば、出発日は何日から何日までの間なら良いか、泊数やグループの人数を減らしてもいい場合はその数、北向き・南向きを逆にしてもいいかなど、予めかなりの選択の幅を与えてくれています。
そして、最後にクレジットカード情報を記入します。
いくらまでならカードを切っていいかを記入しなければなりません。
希望する最長の旅程で必要となる金額を書いておきましょう。
料金
パーミットの料金は、1通あたり基本料金$10+キャンプ1人1泊あたり$8の合計です。
申込書に記入すれば自動で計算してくれますが、一応自分でも確認しておきましょう。
抽選に外れた場合には、一切コストはかかりません。
また、出発の4日前以前のキャンセルであれば、手数料$10を差し引かれた残額が、一年間有効のハイカーズクレジット(グランドキャニオン国立公園でパーミットを購入する際に使えるポイント)で返金されます。
申込の時期
出発月の5か月前の20日~4か月前の1日の午後5時(MST=山岳部標準時)の期間が早期抽選期間です。
この期間に届いた申込が、順番に関係なく一括して抽選される仕組みです。
少しわかりずらいですが、私たちは9月19日出発が第一希望でしたので、現地時間の4月20日から5月1日の5時までが申込期間になり、4月24日にFAXを送りました。
例えば、8月10日に出発希望の場合は、申込期間は3月20日から4月1日の5時の間となります。
早期抽選期間といっても、Rim to Rim は人気のトレイルなのでこの期間にほぼすべての予約が埋まってしまい、これを過ぎると実際はキャンセル待ちをするしかなくなります。
4か月前というのはなかなかハードルが高いですが、行くことが決まればすぐに申込をしましょう。
なお、FAXを送ればあとは待つだけです。特に申込完了の連絡等はありません。
当選すればその通知とパーミットのPDFデータをEmailで送ってくれます。
私たちは5月5日に当選メールを受け取りました。
第1希望、第2希望ともに落選していましたが、出発日に4日ほど余裕を持たせていたため、出発日がずれたのみで、泊数や行程は希望のものでした。
なお、送られてきたPDFデータをプリントアウトして、自分のサインをしたものがパーミット原本となります。
トレッキング中は常に持ち歩いておかなければなりません。
ラストミニットパーミット
事前の抽選に外れてしまった場合も、空きさえあれば現地でパーミットの交付を受けることが可能です。
また、翌日以降のキャンセル待ちをすることもできます。
バックカントリーオフィスでその旨を申し出て整理番号をもらい、翌日の朝8時に当選番号が発表されるという流れです。
ただし、夏期間などのハイシーズンはラストミニットパーミットはほとんど取れないようです。
持ち物
グランドキャニオンでのトレッキングといっても特別に必要なものはなく、基本的には通常の登山の装備で足りますが、特にあったほうが良いものを挙げてみます。
・浄水器や浄水剤
トレイル上には何か所か水場(蛇口)が整備されており、これを利用する場合には不要です。
ただし、浄水器や浄水剤を持っていれば川からいつでも水を取ることができますし、万が一水場が使えない場合のバックアップとしても非常に大切です。
・日焼け対策
日焼け止め、つばの大きい帽子、日焼け防止のための長袖でフードのついた服など。
日中の紫外線は半端ないです。対策をしないとすぐにやけどしてしまいます。
・行動食は塩気のあるものを
とにかく暑くて汗をかくので、水だけでなく塩分を取る必要があります。ポテトチップスなどが最高です。
また、塩飴などはアメリカで売っていないので、日本から持っていくといいかもしれません。
・水着
テント場についたら、川で水あびをしてリフレッシュしましょう。
というか、夏の日中は谷底のキャンプ場では水に入っていないと暑すぎて過ごせません。服のまま入ったとしてもすぐに乾きますが、水着があるとより便利です。
・ハンモック
キャンプ場には大きな木や、ザックをかけるための金属製のポール等があるので、ハンモックも設置しやすいです。
外で寝ると涼しいですし、晴れていれば星空もすごくきれいでおすすめです。
Rim間の交通
Rim to Rim to Rim (反対側のリムまで行ってまた出発地のリムまで戻ってくる)をしない限り、Rim間の交通を考える必要があります。
Rim間を結ぶ公共交通機関としてはTrans Canyon Shuttleが有名です。
Trans Canyon Shuttleは5月中旬から10月中旬まで間、毎日朝と昼の2回、それぞれのリム発で定期便を運行しています。
1人$90となかなかの値段ですが、距離も340kmと長く、時間も4時間半かかるので仕方ありません。
パーミットが取れたらこちらも早めに予約しておきましょう。
FAXなどをしないといけないパーミットとは違って、シャトルの予約はオンラインで簡単に完結します。
私たちはレンタカーを借りていたので、まずレンタカーでノースリムに入り、サウスリムまで歩き、シャトルでまたノースリムまで帰ってくるという方法を取りました。
一方、レンタカーがない場合は、まずサウスリムにバスなどの公共交通機関で入り、そこからシャトルでノースリムまで移動して歩き始めるという行程になります(南向きの場合)。
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